ひとり旅を始めるようになったのは、平成4年のことでしたが、当時から飲み歩きを重点に置いていたわけではありません。その頃はできるだけ観光地や史跡を巡りたいというのが主眼で、時には宿泊するホテルに夜遅くなって到着したり、早朝にホテルを出発することも当たり前のようにプランニングしてきました。
飲み歩きを意識し始めたのは40歳半ばになってからでしょうか。そのきっかけになったのは、長野県出身のグラフィックデザイナーで飲み歩きの著書を多数執筆していた太田和彦さんです。古き良き酒場や雰囲気のいい酒場が著書で紹介されており、「そういう店で腰を落ち着けて飲むのもいいなあ」とあこがれたからです。
地方にももちろん、素晴らしい酒場はたくさんありますが、飲み歩きがメインとなるとやっぱり大都市に目がいってしまいます。そこで注目したのが大阪。最初は、太田さんが推薦する阿倍野「明治屋」を目指したのですが、飲み歩いてみると激安の店、渋そうな店、ディープな店がたくさんあることに気が付きました。
(つづく)